Cpk 簡易計算ツール
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目次
このページは、現場で素早く工程能力指数 Cpk を把握し、意思決定に使えるように設計されたミニツールです。まずは
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「概要」ではCpkの定義と読み方を整理し、「Cpkの計算」では手順と入力のコツ、計算例、よくある入力ミスをまとめています。「注意点」では
正規性やサンプルサイズ、測定系(MSA)など、実務で見落としがちな前提条件を解説します。必要に応じてページ下部の注意点まで目を通し、
自社の取り扱いルール(短期σ/長期σの定義、判定基準、試料採取方法)を揃えたうえで結果を用いてください。
なお、ページは印刷にも対応しています(ブラウザの印刷機能から余白を小に設定するとA4縦1~2枚に収まる想定)。
共有用にPDF化する場合は、結果表示部分が折り返されないように拡大率を90~95%に調整するのがおすすめです。
小ワンポイント:入力欄は数値のみを受け付けます。単位(mm/μm/秒 など)は本文中で統一して扱ってください。 また、値をクリアするには「クリア」ボタンが便利です。ページを再読み込みしてもデータは保存されません(仕様)。
概要
Cpk(Process Capability Index)は、製造工程のばらつきと中心のずれが、顧客や図面で指定された規格(LSL/USL)の
範囲に対してどれほど余裕を持っておさまっているかを表す指数です。計算は「上側の余裕」を表す CPU=(USL-μ)/(3σ)
と
「下側の余裕」を表す CPL=(μ-LSL)/(3σ)
を求め、その小さい方を Cpk=min(CPU, CPL)
として採用します。
ここで μ は工程平均、σ は工程の標準偏差です。分母に 3σ を用いるのは、正規分布において平均±3σがデータの大部分(99.73%)を
含むという経験則に基づき、規格限界までの「3σ何本分の余裕があるか」をわかりやすく示すためです。
実務では基準として Cpk ≥ 1.33 を「望ましい」、1.0 ≤ Cpk < 1.33 を「最低限」、 Cpk < 1.0 を「規格外リスクが高い」とみなす運用が一般的です(ただし業界や安全要求で異なることがあります)。 なお、Cpkは工程が統計的管理状態(特殊原因が抑えられている状態)で、データが概ね正規分布に従うという 前提のもとで解釈する必要があります。もし測定系のばらつきが大きい(ゲージR&Rで不適合)場合や、サンプル抽出が不適切な場合、 自然のばらつきではなく季節・段取り・原材料ロットなどの系統的な変動が支配している場合には、Cpkの数値だけで良否を判断するのは危険です。
似た指標に Cp(中心ズレを無視した理論能力)や Ppk(長期的な実績ばらつきに基づく性能指数)があります。
一般に Cpk ≤ Cp
、また長期の漂い・季節性・混合ロットの影響が出ると Ppk ≤ Cpk
になる傾向があります。
監視・改善のサイクルでは、まず管理図などで安定化→短期の Cpk で能力確認→長期ランの Ppk で実力確認、と段階的に評価すると
誤解が少なく、打ち手(中心合わせ・ばらつき源の除去・規格見直し)の優先順位も立てやすくなります。
Cpkの計算
使い方はシンプルです。上から順に USL(上限規格)・LSL(下限規格)・ 平均(μ)・標準偏差(σ) を入力して「Cpkを計算」を押すだけ。 ここでは現場で迷いやすいポイントと、サンプル計算の流れを具体的に示します。
- 特性値と規格の確認:対象となる品質特性(寸法・抵抗値・時間など)を決め、図面や顧客仕様の LSL/USL を確認します。 片側のみの規格(例:USLのみ)の場合は、もう一方の規格を未設定にせず「実質的に非常に遠い値」ではなく、 片側指数(CPU または CPL)の解釈に限定してください。
- データ採取:安定した条件下で十分なサンプル(目安 n≥30)を取り、外れ値・測定ミスを事前に点検します。 測定器の再現性・繰返し性(GRR)に問題がある場合、工程のばらつきと測定のばらつきが混ざり、判定を誤ります。
- 統計量の算出:標本平均 μ と標本標準偏差 σ を求め、単位を明示して記録します。サブグループ取り(rbar/d2など)を使う場合は、 社内でσの定義(短期/長期)を統一してください。
- 指数の計算:CPU と CPL をそれぞれ計算し、小さい方を Cpk とします。
- 解釈と打ち手:中心ズレが支配的なら「中心合わせ」(オフセット調整)を、ばらつきが支配的なら「ばらつき源の除去」 (設備点検・条件最適化・材料の選別)を優先します。
計算例1(中心一致): LSL=9.000, USL=10.000, μ=9.500, σ=0.05 のとき、
CPU=(10.000−9.500)/(3×0.05)=0.500/0.15 ≈ 3.33、CPL=(9.500−9.000)/0.15 ≈ 3.33、したがって Cpk ≈ 3.33 と算出されます。
計算例2(上側寄り): LSL=9.000, USL=10.000, μ=9.700, σ=0.05 のとき、
CPU=(10.000−9.700)/0.15=0.300/0.15=2.00、CPL=(9.700−9.000)/0.15 ≈ 4.67、したがって Cpk=2.00(小さい方)です。
入力の単位は自由ですが、統一が必須です(例:mmとμmを混在させない)。 また、表示上の四捨五入で Cpk が境目に見えても、実際の判定は社内ルールの丸め規則に従ってください。 書式を整えるだけで意思決定が速くなることが多いため、現場共有用には「特性名・ロット・採取日・装置・治具・測定条件」のメタ情報を 一緒に残すことをおすすめします。
注意点
1) 正規性の確認:ヒストグラムや正規確率紙で大きな歪み・裾伸び・多峰性がないかを確認します。
多峰性は複数条件やロット混在のシグナルで、まず分けて評価すべきです。
2) 管理状態の確認:管理図(Xbar-R、I-MRなど)で特殊原因の有無をチェック。異常点・連続上昇/下降があるときは、
先に安定化を行ってから能力評価へ進みます。
3) 測定系(MSA):GRRが大きいと工程のばらつきを過小/過大評価します。Cpkは測定系を含む見かけのσで
計算されるため、測定改善(治具、測定条件の標準化)の影響がそのまま指数に反映されます。まずゲージを整えましょう。
4) サンプルサイズとサブグループ:nが小さいとσの推定が不安定です。短期σ(rbar/d2等)と長期σ(全データの標準偏差)では
Cpkが大きく変わるので、用途に応じて使い分けを明確に。
5) 自己相関・季節性:連続生産の連番データは自己相関を持ちがちです。その場合、単純な標準偏差は過小になり得ます。
シフト・段取り替え・金型交換・材料ロット切替などのイベント境界で分割し、それぞれを評価してください。
6) 規格と管理限界の混同:管理限界(±3σ)は工程の「現状」を表す値であり、顧客と取り決めた「規格」とは別物です。
規格の根拠が曖昧な時は、顧客とリスクとコストを見ながら合理的な規格設定を再協議することも重要です。
7) 判断の使い分け:短期の安定確認は Cpk、量産の実力は Ppk、中心ズレ要因の切り分けには CPU/CPL、
改善効果の可視化には時系列の管理図が向いています。Cpk だけで全てを語らず、複数の指標を組み合わせると誤解が減ります。
8) しきい値の取り扱い:1.33や1.67はあくまで目安です。安全・法規・顧客クレーム履歴などの事業リスクに応じ、
より厳しい目標を設定することも妥当です。
最後に:能力指数は「工程の健康診断」の一つに過ぎません。結果が境界付近で揺れるときは、データの取り方・測定系・工程条件の見直しを優先し、 数字だけで良否を断定しない運用を心がけましょう。